初めて私が中国人になった日(回想)
私には、見た目が完全にタイ人の友達がいます。タイ子(仮名)です。
試しにタイ子とタイを訪れた時には、当たり前のようにタイ語で話しかけられるわ、レストランでタイ語のメニュー渡されるわで、散々でした。
タイ旅行中に起きた恐ろしい出来事について、今日は勇気を振り絞って綴りたいと思います。
目次
- 目次
- 舞台は、カオサンロードの安宿Nat2
- タイ子入浴中に、つまさきナンパに遭う
- 女神タイ子登場
- タイ子、頭をフル回転させ、何かを悟る
- 「俺、中国語勉強してるんだよね」
- 私は、ちゃんと中国人を演じきった
- 今後の展望
舞台は、カオサンロードの安宿Nat2
カンボジアからタイへ帰って来た日。基本的にその日暮しのアリエッティ(古い)だったので、宿の予約も何もしていませんでした。
カンボジアで出会った日本人の女の子が
「宿知ってますよ」
と言うので、もう夜も遅いし便乗して同じゲストハウスに泊まることに。
それが、このゲストハウス。バックパッカーには名の知れた、Nat2(ナットツー)。
正直、私は思いました。
チッ、日本人宿かよ…
私は、海外まで出て日本人宿に泊まる人の気持ちはわかりません。日本人同士でつるみたいなら、自分の国でやりゃあいいのに、と思っています。
ただ、他に探すのも面倒なので一泊だけ。
それが、悪夢の始まりでした。
タイ子入浴中に、つまさきナンパに遭う
もうだいぶ昔の話なので状況は変わっているのかもしれませんが、その頃はNat2のWi-Fiがなかなか弱くて、一階ロビーまで行かないと電波を拾えませんでした。
日本人がうじゃうじゃうごめくロビーに降りるのは気が向かないけど、twitter更新してリア充ぶりたいし、部屋にいるのも暇だし、一階へ降りることにしました。
「ココナッツアイスまいう〜なう!」
などと、リア充臭いツイートをしていると…
「ねえねえ、いつからここ泊まってんの?」
「俺たちこれから飲みに行くけど、一緒に来る?」
男2人組が話しかけてくるではありませんか。
(ていうか、あんたたち誰なんだよ。まず己の名を名乗れ。君の名は??????)
彼らの名前を聞くことはできませんでしたが、一人は特徴が無さすぎて顔も覚えてないし、一人はポケモンのタケシに似ていたので、当ブログ内では虫取り少年(仮名)とタケシ(仮名)と名付けます。
私はリア充ツイートをするのに忙しく、虫取り少年とタケシの相手をしている暇はないので、豪快に無視することに決めました。
「ねえねえ、タイのビールとか飲む?シンハーとかうまいよ」
「あ、フェイスブックとかやってる?」
「タイにはどれくらいいるの?」
「ビリヤード、やる?」
「日本のどこに住んでんの?」
(お前ら…うるせえ…)
だんだん私の機嫌も悪くなってきた上に、今更返事をするのも不自然なので、徹底的に無視をしました。
正味10分程度。言葉のドッジボールは続きました。
女神タイ子登場
「ここにいたんだ〜」
タイ子が初めて女神に見えた。シャワーを終えて、ロビーまで降りてきたのである。
水も滴るいい女。タイ子とここへ来たのは正解だった。タイ子と出会えて良かった。神様タイ子に出会わせてくれてありがとう。
虫取り少年とタケシは、タイ子に目を向けた。
そして、タケシは尋ねる。
「この子、何も喋らないんだけど、日本人じゃないの?」
( な ぜ そ う な る )
しかし私は、何を間違えたのかこう言った。
「対。(訳:そうです)」
とっさに中国語が口をついて出た。
ここで、私は生まれて初めて中国人になった。
タイ子、頭をフル回転させ、何かを悟る
さすがは長い旅をした仲である。
この10分間の出来事を全て見ていたかのように何かを悟り、話を合わせたタイ子。
タイ子「そうなんだよね〜。この子、中国人なの。日本語あんまりわからなくて。」
虫男(めんどいから省略)「やっぱりね。俺、最初からそうかと思ってた。」
タケシ「俺も」
つまさき「(中国語で)ごめんなさい。私、日本語話せない。」
ここから、虫男とタケシの質問攻めが再び始まる。
タイ子は中国に留学していたこともあり、なかなか中国語が話せるので、虫男&タケシと私の通訳係となった。
「俺、中国語勉強してるんだよね」
しばらく話をすると、虫男が突然、自分も中国語を勉強していると言い出した。
まずい。非常にまずい。
中国語で私と会話をしようとしてくるではないか。
私は第二外国語として大学で中国語を勉強していた程度で、留学経験もないし、流暢に話せるわけではない。
(もう正直限界…)
タイ子へテレパシーを送った。
すると、タイ子は
「この子、シャイだからあんまり話したがらないんだよね。」
神様かと思った。
虫男も、タケシも、この一言で納得したようだった。
タイ子「じゃあ、部屋戻るね」
つまさき「再見…!(あくまでもシャイぶってうつむきながら)」
虫男・タケシ「「ザイジェン〜!」」
私は、ちゃんと中国人を演じきった
部屋のドアを閉めるまで、私たちは一瞬たりとも気を抜かなかった。
やり切った。
中国人を演じ切った。
もしも、近くで本物の中国人がトムヤムクンでも食べながらこの会話を聞いていたならば、私のでたらめ中国語に驚いて、食べてるトムヤムクンを2メートルは飛ばせただろうと思う。
泊まっていたのが日本人宿で、本当に良かった。
Nat2最高。
今後の展望
今でも時々、タイ子とこの日の話をすることがある。あの時、1ミリもずらさずしっかり話を合わせるという神対応をしたタイ子であるが、正直内心「フザケンナ」と思っていたらしい。
無理もない。よくあそこまで「中国人と旅行に来た日本人」を演じ切ってくれたと思う。彼女には、助演女優賞を与えたい。
次は、日本を舞台に、タイ人になりすましたいと目論んでいる。もちろん、女神であるタイ子と一緒に。いざという時に私を助けてくれるタイ子と一緒に。
タイ人になりすますというプロジェクトだけのために、私は今日から毎日タイ語の勉強をすることをここに約束する。
そして最後に、虫男とタケシがどこかでこのブログに出会うことがあったなら、連絡をくれると嬉しい。今度こそ日本語で会話をしたいと思う。
完