あの頃の私じゃないから、ちゃんと会いたい
住んでるコンドミニアムから出ると、毎日の水撒き掃除が始まっていた。
清掃員の方は私を見るなり
「滑りやすいからゆっくり歩くんだよ。あなたはいつも速く歩きすぎ」
と言った。
これが私の好きなやりとり。
昔から私は、自分を理解してくれているような発言が大好きで大好きで、この言葉だけで6杯はお米が食べられるんじゃないかと思っている。
仕事場でも、
「あそこに新しくできたカフェがね、内装がお姫様みたいで、つまさきちゃんが好きそうで連れて行きたいと思ってたんだよ」
「最近見つけたカフェに美味しそうなケーキがあって、つまさきちゃん絶対好きだから行かない?」
なんて言葉をかけてもらえたりする。そんな言葉を聞く度に、たまらなく嬉しい気持ちになる。
中学、高校、大学、そして社会人になっても、こうやって私のことをよくわかってくれる人が必ずそばにいることが幸せだ。
ただ、寂しいことに、私はあの頃の私じゃない。
私はもうQooのすっきり白ブドウは飲まないし、
マックのポテトにケチャップをつけて欲しいとお願いしたりもしない、
毎日酢こんぶも食べてないし、
不思議の国のアリスモチーフの小物だって持ってない。
カラオケで毎回椎名林檎を入れたりもしないし、
Aラインのワンピースに飛びついたりもしない。
私はもうあの頃の私じゃないから、ちゃんと会って、また今の私を知って欲しい、なんて傲慢なことを思ったりしている。