つまさき47度

ある男友達からの報告と3分を天秤に。

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ホーカーでたべたキャロットケーキ。人参は入っておらず、大根餅でできている。

 

突然ですが、私はLINEのボイスメッセージをよく使う。

 

歩きながらでも録音できるし、画面を見ながら打つ必要もないし、その時の温度も伝わるし、何より楽だ。

電話では相手の時間を考えなければならないし、ボイスメッセージならば忙しければ聞かないでもらって構わない。

 

とにかくボイスメッセージをよく使う。

 

大学で出会い、今でもボイスメッセージでやり取りをすることの多いある男友達が、今年の夏にシンガポールに来る。

「私に会いに!!」なんてキャピキャピ言うような仲ではないけれど、紛れもなく私に会いに来るのだ。

 

シンガポールの色々なものを見せたいし、こっちでの生活について話したいこともたくさんある。

 

ボイスメッセージで、頻繁にその夏の訪問について話をしていた。

 

いつものように、彼からボイスメッセージが届いた。

 

「フライトとか、予定がまだ決まってなくて申し訳ない。時間作ってそろそろ決めるわ。」

 

彼は教員だ。忙しいのは十分わかっている。

焦らせてしまってこちらこそ申し訳ないと思いながら、続きを聞く。

 

「そんなことより、報告したいことがある」

 

胸騒ぎがする。

 

宝くじが当たった?

 

病気が発覚した?

 

いや、結婚する?

 

結婚だとしたら、私は日本に帰れないし式に参加できない。大切な友達の式に参加できないのが、ものすごく悔しい。

 

シンガポールに来ることを決断したのは自分だ。自分を恨む他にない。

 

彼は言う。

 

「右車線の黒い軽自動車に乗った女の子がものすごく可愛かった」

 

私の予想は悉く崩れ落ちた。

 

「最初、彼女に出会ったのは...」彼は続ける。

 

要約すると、バックミラーから可愛い運転手が見え、あまりの可愛さに、自分の好奇心を信じてミラーを通さずに彼女を見るためだけに左車線にずれたとのこと。

 

丸いオシャレメガネをかけた女子は苦手だと思っていたが、それも似合ってしまうほど彼女は可愛かったようだ。

 

彼は、この出来事を説明するために3分24秒を費やした。

 

私は、3分あればホールニューワールドを熱唱できたじゃないかと後悔した。

 

これほどに3分を無駄だと思ったのは初めてだった。

 

次から彼のボイスメッセージを聞くときは、決して無駄な時間だったなんて思わないように筋トレでもしながら聞こうと決意した。